英検1級のライティングは2題あります。そのうちの1題が英文要約です。290〜315語の英文を読んで、90〜110語にまとめます。
「3分の1に圧縮する」と言われると、まずどこを削るかを考えたくなります。ただ、公式の問題を並べると、原文も模範解答も同じ形をしていました。形が決まっているなら、迷う場所は「削る量」ではなく「何を残すか」に寄せられます。この記事では、その残すものを先に決める手順を書きます。1級 要約の練習問題(12本)と合わせて使ってください。
290〜315語を、90〜110語に。決まっているのは「残すもの」
まず、この問題で動かない数値を確認します。ここだけは覚えておいて損がありません。
| 項目 | 仕様 | 種類 |
|---|---|---|
| 解答の語数 | 90〜110語 | 公式の指定 |
| 解答の段落 | 1段落(改行なし) | 公式サンプル解答6件すべて |
| 原文の語数 | 290〜315語 | 実測 |
| 原文の段落 | 3段落 | 実測 |
| 採点 | 内容(論旨カバー)/構成/語彙/文法 | 公式の採点観点 |
解答は1段落です。読みやすくしようとして段落を分けたくなりますが、公式の模範解答は改行なしで最後まで続きます。段落を切ると、そこで論の流れも切れて見えます。1段落で書き切ると決めておくほうが、構成の評価は安定します。
そして採点は4観点です。内容・構成・語彙・文法。ここで注意したいのは、「内容」が論旨をカバーしたかを見る観点だということです。英語が上手でも、原文の論の一部が落ちていれば内容の点は伸びません。逆に言えば、落としてはいけない部分がどこかを先に知っておけば、内容の点は設計できるということです。
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原文の3段落は、毎回この役割で並んでいる
原文は3段落です。しかも、それぞれの段落が担う役割が回ごとにばらけません。
| 段落 | 役割 | 読むときの目印 |
|---|---|---|
| 第1段落 | 背景と問題提起——何が起きていて、なぜそれが困るのか | 中立に事実が並ぶ。まだ誰も対策していない |
| 第2段落 | すでにある対策——誰が、何をして、どう対処しているか | 制度・技術・取り組みの名前が出てくる |
| 第3段落 | 逆接+その対策に残る実質的な限界 | 段落のあたまが逆接(However / Despite these ... など) |
つまり、読み始める前から「問題」「対策」「対策の限界」の3つが1つずつ入っていることがわかっています。すると読むときの仕事は、内容を全部理解することではなく、この3つがどの文に書いてあるかを見つけることになります。
目印は2か所です。第2段落で対策の名前が出るところ。そして第3段落のあたまの逆接。この2か所に印をつければ、原文の骨格は取れます。第3段落だけは、あたまの逆接の先まで読んでください。「限界」の中身はそこに書かれています。
1級で要約が出るようになった経緯は 英検2024年度リニューアルで何が変わったか にまとめてあります(1級だけは2024年度第2回からの出題です)。
残すのは3つ。「何が問題か」「どう対処しているか」「それでも残る限界」
原文の3段落が上の役割で並ぶので、残すものは最初から3つに決まります。読みながら次の3つを、それぞれ日本語で一言ずつメモしてください。英語で書くのはあとです。
- 何が問題か——第1段落から。事象そのものではなく、それの何が困るのかを取る
- どう対処しているか——第2段落から。誰が何をしているか。ひとつにまとめて構いません
- それでも残る限界——第3段落から。その対策のせいで生じる不都合まで取る
実際にやってみます。次は、電子機器の廃棄を題材にした原文を読んだつもりで取ったメモです(例として新しく作ったものです)。
① 問題 買い替えが速く、捨てられた機器の中の希少な金属が失われる。
しかも処理の過程で有害物質が周囲に出る
② 対策 メーカーが回収の費用を負担し、国が修理しやすい設計を義務づけている
③ 限界 回収に乗るのは廃棄の一部。回収して取り出す工程自体が大量の
エネルギーを使い、その費用は製品価格に乗る。規制の緩い国への
持ち出しは止まっていない
③に注目してください。「まだ課題が残る」で止めていません。対策そのものが生む不都合——費用が買い手に回る、工程がエネルギーを食う、抜け道が残る——まで書いています。ここが1級の要約でいちばん配点に効くところです。
メモが3行そろえば、あとは英語にするだけです。3行に足りない要約は、英語が正しくても内容の点で伸びません。逆に、この3行がそろっていれば、多少ぎこちない英語でも論旨はカバーできています。
省くのは、具体例・数字・固有名詞・言い換えの繰り返し
残すものが3つと決まれば、それ以外は落ちます。実際、原文の大半は次の4種類でできています。
| 省くもの | 原文での見え方 | 要約でどうするか |
|---|---|---|
| 具体例 | For example, ... / 事例の列挙 | 上位の言い方に1語でまとめる |
| 数字 | 割合・年・金額 | 落とす。程度が要るときは most a fraction of のような語で置く |
| 固有名詞 | 国名・企業名・制度名・人名 | 落とす。題材そのものを指す語だけ残す |
| 言い換えの繰り返し | 同じ主張を別の表現で繰り返す文 | 1回だけ書く |
ひとつだけ例外があります。その回のテーマそのものを指す語です。技術名や制度名でも、それを落とすと何の話かわからなくなる語は残してください。言い換えると意味がぼやけます。
指示文は「できるだけ自分のことばで」と求めますが、これは易しく言い換えろという意味ではありません。要約の言い換えは一段かたく、短くの方向です。動詞のかたまりを名詞にする、2文を関係詞や分詞で1文にする、具体例を上位の言い方にまとめる。この3つで、語数は自然に落ちます。
同じ考え方をひとつ下の級で先に練習したい方は 英検準1級 要約問題のコツ をどうぞ。原文が短いぶん、対応づけの練習がしやすくなっています。
最後の1文で、逆接から限界に着地する
ここが1級の要約でいちばん外しやすいところです。公式の模範解答は、どれも逆接で折り返して「残る限界」で終わっています。「対策があってうまくいっている」で終わる公式の要約は、これまで一つもありません。
これは書き手の好みの問題ではありません。原文の第3段落が逆接で始まって限界を述べる以上、そこを落とした要約は原文の論旨をまとめたことにならないからです。内容の観点で確実に引かれます。
折り返しに使う語は、次のあたりから選びます。
| 折り返しの型 | 使いどころ |
|---|---|
However, / Yet | いちばん素直。迷ったらこれ |
Nevertheless, | 対策の効果を認めたうえで折り返すとき |
Despite these measures, | 直前で対策をまとめて書いたとき |
Unfortunately, | 限界が実害の形をしているとき |
While ..., ... Consequently, ... | 対策と限界を1文に組み込むとき |
最後の1文の中身は、次の3つのどれかになることが多いです。
- 届く範囲が狭い——対策が対象の一部にしか及んでいない
- 代償がある——費用・負担・別の被害が誰かに移っているだけ
- 抜け道が残る——規制や制度の外側で同じことが続いている
さきほどの3行メモを、この形で英語にするとこうなります。1段落で、逆接から限界に着地しています。
Electronic devices are replaced faster than before, and the discarded units contain metals that are scarce and hard to obtain. Because most of this equipment leaves homes through unofficial channels, the materials are burned or buried, releasing harmful substances near the people who handle them. Manufacturers now pay for collection programs, and several governments require designs that are easier to repair. However, these measures reach only a fraction of the waste, the recovery process itself consumes large amounts of energy, and its cost is passed on to buyers, while shipments to countries with weaker rules continue.(96 words)
最後の文だけを見てください。However で折り返したあと、限界を3つ並べています——届く範囲が狭い/代償が買い手に回る/抜け道が残る。ここを However, some problems still remain. で終えてしまうと、内容の観点で見てもらえるものがありません。
自分の意見は入れません。I think や we should は要らないということです。意見を書くのは、ライティングのもう1題のほうです。そちらの型は 英検1級 英作文(意見論述) にまとめてあります。
よくある外し方
- 第3段落を落とす——時間切れで対策までで終える。いちばん多く、いちばん重い外し方です
- 逆接はあるが限界が形だけ——
However, there are still challenges.のように中身が無い - 原文の文をつなぐだけ——語数も減らず、語彙の観点も上がりません
- 段落を分ける——公式の模範解答は1段落です
- 具体例を残す——固有名詞と数字は、ほぼ落とせます
練習問題で仕上げる
型を短く言うと「3段落を3つのメモに。最後は逆接で限界に着地」です。あとは同じ形の英文で手を動かすだけです。
- 英検1級 要約問題の練習問題(12本)——原文・解答例つき。1本ずつ形が同じか確かめながら進めてください
- 練習問題の例(保護区と観光の話)——第3段落の「残る限界」がわかりやすい回です
- 英検1級のまとめページ——他の大問の対策はこちらから
1本目は、時間を計らずにやってみてください。3つのメモが取れるかどうかだけを見ます。取れるようになってから、90〜110語に収める練習に進むほうが早く仕上がります。
最後までお読みいただき、有難うございました。
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