英検1級のライティングは2題あります。そのうちの1題が意見論述です。与えられたTOPICに賛成か反対かを決めて、200〜240語で書きます。
準1級から上がってきた方がまず戸惑うのは、語数が増えたことよりも理由を3つ出さなければならないことです。2つまではすぐ浮かぶのに、3つ目で手が止まる。そして3つ目を無理に絞り出した結果、そこだけ内容が薄くなる——これが1級でいちばん多い崩れ方です。
この記事では、その3つ目を最初に確保してから書き始める手順を書きます。英検1級 英作文(意見論述)の練習問題と合わせて使ってください。
5段落・200〜240語。準1級から増えるのは「理由の数」
まず、この問題で動かないところを確認します。ここが決まっていることを知っておくだけで、本番で考える量はかなり減ります。
| 項目 | 仕様 | 種類 |
|---|---|---|
| 解答の語数 | 200〜240語 | 公式の指定 |
| 理由の数 | 3つ | 公式の指示文に明記 |
| 構成 | 5段落(導入 → 理由① → 理由② → 理由③ → 結論) | 公式サンプル解答の構造 |
| 理由の段落の長さ | 1段落あたり50〜55語 | 公式サンプル解答の実測 |
| 採点 | TOPIC対応/内容/構成/語彙/文法 | 公式の採点観点 |
| 準1級との違い | 理由が2つから3つに増える | 級の比較 |
注目してほしいのは理由の段落の長さです。1段落50〜55語。これは日本語にすると、そう長くありません。1つの理由につき4文ほどの分量です。つまり1級の意見論述は、長い文章を書く試験ではなく、同じ大きさの小さなかたまりを3つ並べる試験だということです。
そして採点は5観点。TOPIC対応・内容・構成・語彙・文法です。先頭にTOPIC対応があることに注意してください。英語としてどれだけ立派に書けていても、問われた論点からずれていれば、そこは伸びません。裏を返せば、TOPICの語をそのまま使って立場を言い切るだけで、この観点は確保できます。
ライティングのもう1題は要約です。そちらは90〜110語で、書き方の性質がまったく違います。手順は 英検1級 要約問題の解き方 にまとめてあります。
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導入で理由を3つ予告する。書き切れないテーマは、ここで捨てる
導入でやることは2つだけです。立場を言うことと、これから出す理由3つを名前で予告すること。凝った書き出しは要りません。
ここで例を1つ作ります。TOPICはこの記事のために新しく用意したものです。
TOPIC Agree or disagree: Governments should require large companies
to reduce the working hours of their employees
賛成の立場で書いてみます。導入はこうなります。
I agree that governments should require large companies to reduce working hours. There are several reasons for this, but the most important ones are the health of workers, the effect on family life, and the long-term cost to the economy.(40 words)
2文目に、the health of workers / the effect on family life / the long-term cost to the economy と3つ並んでいます。これが予告です。読み手はこの1文で、残りの3段落に何が来るかを知ります。構成の観点は、ほぼここで決まります。
そして、この予告文にはもっと大事な役割があります。3つ書けないテーマを、書き始める前に捨てられるということです。
賛成・反対を決めるとき、多くの人は「自分が本当にそう思うか」で選びます。1級では、そこは基準になりません。基準は3つ目まで書けるほうはどちらかです。本心では反対でも、賛成側なら理由が3つ立つのなら、賛成で書いたほうが点は安定します。意見の中身は採点されません。採点されるのは、その意見を3つの理由で支えきれたかどうかです。
手順にすると、書き出す前にこれをやります。
- 賛成側の理由を思いつくだけ挙げる(日本語で、単語だけで構いません)
- 反対側でも同じことをする
- 3つ立ったほうを選ぶ。同数なら、具体例がすぐ浮かぶほうを選ぶ
- 選んだ3つを、そのまま導入の2文目に並べる
この手順を飛ばして書き始めると、理由②まで書いたところで手が止まります。そこから立場を変えるには、書いた分をほとんど捨てることになります。止まる場所を、書く前に先送りしておくのがこの手順です。
理由の段落は50〜55語。「主張 → 根拠 → 具体 → だから」で埋める
理由の段落は3つとも同じ形で書きます。中身が違うだけで、部品の並びは変えません。
| 部品 | 書くこと | 目安 |
|---|---|---|
| 主張 | 導入で予告した理由を、1文で言い切る | 1文。First, Second, Finally, で始める |
| 根拠 | なぜそう言えるのかを一般論で説明する | 1文 |
| 具体 | 場面・人・数字のどれかを1つ出す | 1文 |
| だから | TOPICの語を使って、主張に戻す | 1文 |
さきほどの導入に続く、1つ目の理由です。
First, long working hours damage the health of employees. Doctors report that people who sleep less than six hours a night are more likely to suffer from heart disease and depression. A worker who leaves the office at midnight cannot recover before the next morning. Shorter hours would reduce these medical problems.(52 words)
4文が、上の表のとおりに並んでいます。主張(健康を損なう)→ 根拠(睡眠が減ると病気になりやすい)→ 具体(深夜に退社する人は翌朝までに回復できない)→ だから(労働時間を減らせば減る)。
いちばん抜けやすいのは3つ目の「具体」です。ここが無くても文としては成立するので、時間が無いと飛ばしてしまいます。ただ、内容の観点で差がつくのはここです。一般論だけの段落は、どのTOPICにも使い回せる段落ということでもあります。使い回せる段落は、そのTOPICについて書いたことになりません。
具体は、大きなものでなくて構いません。1人の人が何をしているかを書けば十分です。上の例も、出しているのは「深夜に退社する人」1人だけです。統計や固有名詞を思い出す必要はありません。
4文目の「だから」では、TOPICに出てきた語をもう一度使います。上の例では Shorter hours がそれにあたります。段落ごとにTOPICへ戻ることで、TOPIC対応の観点が3回確保できます。他の受験者の解答例で、この戻り方を見ておくと早いです——練習問題の解答例(論理の展開を追う回)で1本分の流れを確かめてみてください。
3つ目が弱くなるのは、観点をずらしていないから
1級で最も多い崩れ方に戻ります。理由③だけ内容が薄いという現象です。
原因はたいてい、3つの理由が同じ観点から出ていることです。たとえば労働時間の例で、①働く人が疲れる ②働く人が体調を崩す ③働く人のやる気が下がる——と並べたとします。3つあるように見えますが、どれも「働く人本人がどうなるか」の話です。同じ観点の中で言葉を変えているだけなので、③に書くことがなくなります。
避け方は単純で、3つの理由を別々の観点から取ることです。観点の引き出しを先に持っておきます。
| 観点 | 問いの形 | 労働時間の例 |
|---|---|---|
| 個人 | 一人ひとりの体・時間・機会はどうなるか | 健康を損なう |
| 社会 | 家族・地域・次の世代はどうなるか | 家庭の時間が失われる |
| 経済 | お金・仕事・産業の側から見るとどうか | 離職と失敗のコストが増える |
| 環境 | 資源・自然・長期の持続はどうか | (この回では使わない) |
| 制度 | 公平さ・権利・法の側から見るとどうか | (この回では使わない) |
この表の使い方はこうです。TOPICを読んだら、5つの観点を上から順に当てて、賛成側で何か言えるかを試します。3つ埋まれば賛成で書けます。埋まらなければ反対側で同じことをします。「思いつくのを待つ」のではなく「当てはめて確かめる」ので、時間の読める作業になります。
観点をずらすと、③まで書くことが残ります。さきほどの続きです。
Second, families suffer when parents are never at home. Children need adults who can eat with them and listen to them, and elderly relatives need someone nearby. In many households, both parents work late, so neither of them can do this. Reducing hours by law would return that time to families.(51 words)
Finally, exhausted employees are expensive for the economy. Tired staff make mistakes, take sick leave, and quit, and every replacement has to be trained again. Several countries that have cut the working week report that output per hour did not fall. Shorter hours are therefore an investment, not a loss.(50 words)
①が個人、②が社会、③が経済です。3つ目が「経済」という別の土俵に移っているので、①②で書いたことを繰り返さずに4文が埋まります。しかも③は、反対側の人が言いそうなこと(企業が損をする)に正面から答える位置に来ています。観点をずらすと、理由が増えるだけでなく、反論への備えにもなります。
同じ観点の引き出しは、二次試験のスピーチでもそのまま使えます。英検1級 面接(二次試験)の練習でも、意見を3方向から出す形は変わりません。
結論は言い換えるだけ。新しい理由を出さない
結論でやることも2つです。立場をもう一度言うことと、3つの理由を別の言い方でまとめること。ここで4つ目の理由を出さないでください。支える段落が無い理由は、内容の観点では足しになりません。
In conclusion, I support a legal limit on working hours at large companies. Healthier workers, stronger families, and a more productive economy are worth more than the extra hours that companies gain now.(33 words)
導入では the health of workers だったものが、結論では Healthier workers になっています。同じ語をそのまま繰り返さないのが、語彙の観点で効くところです。名詞を形容詞にする、動詞を名詞にする——この程度の言い換えで足ります。難しい単語に置き換える必要はありません。
ここまでの5段落を並べると、こうなります。
| 段落 | 役割 | この見本の語数 |
|---|---|---|
| 導入 | 立場+理由3つの予告 | 40語 |
| 理由①(個人) | 健康 | 52語 |
| 理由②(社会) | 家庭 | 51語 |
| 理由③(経済) | 費用 | 50語 |
| 結論 | 言い換えて総括 | 33語 |
| 合計 | — | 226語 |
合計226語。200〜240語のまん中あたりです。理由の3段落で150語前後を使い、残りを導入と結論で分ける——この配分にしておくと、書きながら語数を数え直す必要がなくなります。数えるのは理由の段落だけで足ります。
下限の200語ぎりぎりを狙うのはおすすめしません。理由の段落が短くなるほど、4つの部品のどれかが入らなくなるからです。落ちるのはたいてい「具体」で、そこは内容の観点で見られる部分です。
よくある外し方
- 導入で理由を予告しない——読み手は最後まで全体像を持てません。構成の観点で損をします
- 3つの理由が同じ観点——③が①②の言い換えになり、内容が薄くなります
- 理由①だけ長い——書けることから書き始めると起きます。3段落は同じ大きさに揃えます
- 具体が一度も出てこない——どのTOPICにも使える解答になってしまいます
- 結論で新しい理由を出す——支える段落が無いので、内容の点には結びつきません
- 本心のほうで書く——理由が2つしか立たない側を選ぶと、③で必ず詰まります
練習問題で仕上げる
型を短く言うと「観点を3つずらして選び、50〜55語の段落を3つ並べる」です。あとは同じ形で手を動かすだけです。
- 英検1級 英作文(意見論述)の練習問題——TOPIC・解答例つき。1本ずつ、5段落の形が同じか確かめながら進めてください
- 解答例で論理の展開を追う——導入の予告が、3つの段落にどう回収されているかを見る回です
- 英検1級 要約問題の解き方——ライティングのもう1題(90〜110語)はこちらです
- 英検1級のまとめページ——他の大問の対策はこちらから
最初の数本は、時間を計らずにやってみてください。見るのは観点の違う理由が3つ立ったかどうかだけです。3つ立つようになってから、200〜240語に収める練習に進むほうが、結局は早く仕上がります。
最後までお読みいただき、有難うございました。
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